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  • 執筆者の写真Shimizu Yoshiko

白石美雪氏によるCDレビュー(レコード芸術2019年12月号)


マクロコスモス第1巻、第2巻、夏の夜の音楽(第3巻)(0015029KAI)のCDについての白石美雪氏によるCDレビュー(レコード芸術 2019年12月号)


ペダルでダンパーから開放されたピアノの弦が色彩的な倍音を生み、幻想的な音響空間が広がる。演劇風の叫びや語り、口笛を交えての大胆な内部奏法を行い、〈ディエス・イレ〉からショパン、ベルリオーズまでを自在に引用しながら、黄道十二宮の名を冠した各曲が展開される。さらに一人二役で多重録音した《夏の夜の音楽(マクロコスモス3)》では冒頭でメシアン風の鳥のさえづりが繊細なタッチで奏でられ、終局ではバッハのフーガがはるか彼方からきこえてくる。立体的な表現がみごとだ。ヘンツェと同じく、クラムは作曲技法の革新に重心を置いた、かつての20世紀音楽史では位置づけにくかった作曲家の一人。よくウエーベルンやドビッシーの影響が指摘されるが、むしろストリング・ピアノやクラスター奏法を駆使したヘンリー・カウエルの後継者として位置づける方が理解しやすい。第3巻〈さすらい人幻想曲〉のスライド・ホイッスルのとぼけた味わいなど、ときに民族音楽を想起させるのもカウエルに通じる特徴。そこにスクリャービンの神智学のような、一種のオカルティズムが結びついた。 今年90歳を迎えたジョージ・クラムの代表作《マクロコスモス》第1巻から第3巻までを収録した2枚組。クラムの音楽に魅せられてアメリカへ留学し、作曲家と親交を重ねてきた清水美子による渾身の記念アルバムである。部分的には録音の多い曲集だが、3巻全曲を網羅し、クラムの世界観を示した点で優れている。



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